枯れた草や小枝を捨てる穴を掘っていると、蟻たちの巣を壞すらしく大量の白い卵(?)と蟻が出てきたり、巨大ミミズがニョロッと出てくる以外にも、こんなものに出くわすことがある。
体長5-6cmもあるような、むっちりと肥えた幼虫が現れた。
「ギョエッ!」
と心の中で叫びながらも、目は釘付けになった。
子どもの頃にも見たことが無かったかもしれない、と思う。
大体、カブトムシやクワガタの幼虫なんてものに夢中になるのは男の子ではないか。
そう言えば、弟が透明なプラスチックの虫かごに幼虫を入れて、土の中に眠る姿を観察していたような記憶がある。
土の中でジッと動かないものの何が一体面白いのだろうと思ったものだ。
今こうして、改めて目の前に出現されると、ジャングルだかどこやらで
「貴重なタンパク質だ」
と言って食べていた原住民を思い出す。
(これはデカクて丸々してて、彼らにはご馳走にちがいない・・・・・・)
とっさにそんな考えが浮かんできたが、だからと言って、
「食べてみた~い!」
なんて、当然微塵も思わない。
私は慌てて、掘り出した土を元に戻した。
まるで見なかったかのように、穴を埋めたのだ。
だって、もしカブトムシだったら高値で売れるかもしれないじゃないか。
売れない、売れない!
本気で売ろうとなんか思ってないが、カブトムシかどうか確かめたくなった。
隣に座っている新聞記者に写真を見せて、聞いてみた。
すると、
「クワガタは土の中で成長して、時に植物の根などを食べて「害虫」になってしまうんだけど、カブトムシは枯れた木の中で“清く正しく”成長して、そういう害を及ぼすことはないんだよね」
と言う。
そうかぁ・・・・・・、カブトムシは「清く正しく」生きているのかぁ。
妙にそこの所に共鳴して、私はどんなに困窮してもカブトムシを売ることなんてしないぞ!
と心に誓ったのだった。・・・・・・
(あまり意味の無い「誓い」だね)。