毎朝5時50分になると、ラジオのタイマーが入り曲が流れ出す。
セットした時は「6時」だったのに少しずつ時間がズレてきて、現在設定時間よりも10分早くなっているというわけだ。
いつもなら、流れてくるクラシックを聞きながら、ゆらゆらと意識をあっち側こっち側と行ったり来たりさせるのだが、今朝はそうもいかなかった。
灼熱とはいわないまでも、じっとりと汗をかくような朝日が差し込んできていたからだ。
基本的に晴れると嬉しいが、あまりの暑さに、最高の時間を邪魔されたような気持ちで目が覚める。
例えれば・・・・・・、
誰だか素敵な恋人と、何やらいい雰囲気で寄り添っていたのに、
「なんだ、夢か・・・・・・」
と、目の前に敷いているシーツが見えたような。
そうだ・・・・・・、昨日も雨が降っていないから、“早朝”のうちに水撒きをしなくちゃ。・・・・・・
ガーゼケットを跳ね除けるように体を起こし、ついでに枕カバーとシーツをはぎ取って抱えると、私はパタパタと1階へ降りて行った。
歩きながら、手当たり次第にすべての窓を開けていく。
朝の空気が家の中に流れ込んでくると、息を潜めていた何かがやっと大きく呼吸を始めたような気分になる。
いつも真っ先に行う水浴びは、庭の水撒き後に行うことにして、半分寝ぼけ眼のまま、どうせ洗うパジャマの上から長そで長ズボンを着用して、長靴と軍手、さらに顔にタオルを巻いて帽子をかぶる。
コンタクトを入れる前だから、その上から眼鏡をかけると、どう見たってアヤシイ・・・・・・。
玄関の鏡に映る自分の姿を見て、おもわずニヤリと笑う。
水撒きついでに、ぐんぐん伸びているミニトマトの支柱を長いものに変えて、日差しを遮っているセンダンの枝を高枝ばさみでバチバチと切る。
私の周囲を、インベーダーの大軍のように藪蚊が襲撃してくる。
気づけば1時間弱が経過し、全身汗だく、心拍数も上がっている。嬉しいはずの陽の光から、逃げるように家の中へ戻る。
洗濯機を回しながら水を浴びれば、
はぁ~♡ 気持ちいい~♪
これでビールを飲んだら、最高~!・・・・・・
という気持ちになるのだけれど、まさか朝一で飲んだくれるわけにもいかない。
しかし、これで今日は、ま昼の炎天下に繰り出さなくてよし!
そう自分に言っている声が聞こえて、ホッとする。
網戸の向こうからは、すでに熱風が入ってくる。
これからの季節は、ちょっとタイムスケジュールを変えないといけないな・・・・・・。
ほら、セミが鳴き出した!