目覚めは、いつも通りの平和な朝だった。
異変に気づいたのは、私が洗濯するシーツを抱えて一階に下りてきて、窓の外に目をやった時。
真っ赤になっていた凜々子に「模様」が見えた。
私はメガネをかけていたが、それでも遠くまではよく見えない。
しかし胸騒ぎは途端に私を不安にし、ゆるりゆるりと動いていた私の動きは急に慌ただしくなった。
(早く着替えて、見に行かなくちゃ!・・・・・・)
どうか嫌な予感は当たらないでほしい・・・・・・、と願ったが、この願いは叶わなかった。
ああ! 誰だ?!
きっと、鳥に違いない。 むくどりか? ヒヨドリか?
焼き鳥にして食っちゃうぞ~!!!
私の無念さと怒りはどこにもぶつけようがなく、虚しく食べ残された凜々子をしばし眺める。
(残りをピザトーストにして、食べよ・・・・・)
せっかくの朝が台無しだ、と思いながら、まずは頭を冷やさねばと庭に水を撒く。
昨夜多少雨が降っているので、いつものように念入りに行うこともないだろうと、いつもよりも半分の時間で終わる。
ああ、せっかくピザを作ろうと思っていたのに・・・・・・・。
まだ未練たらしく悔やむ。
鳥がつついた果実は、間違いなく甘い。
だけど、昨年凜々子を収穫した知人が
「あまり、おいしくなかった」
といっていたから、まさか鳥がつつくとは思っていなかったのだ。
油断していた・・・・・・。
つつかれた部分を切り取って、パンに乗せた残りを食べてみたら、
(おいしいじゃないかぁ~!)
そこでバジルとラディッシュ、熟れているたった一つのイエローミニトマト、僅かな枝豆を採る。
フランスパンは残念ながら切れているので、冷凍庫から丸いパンを2個出して、柔らかくなってきたところで半分に割る。
その上に凜々子、バジル、ラディッシュ、鶏ハムを並べて、先日買っておいた「とろけるモッツァレラチーズ」を乗せて焼いた。
なんとなく、「念願の」ピザ(トーストだけど)を食べた気分になって、大いに満たされた。
幸福になっていた。
なんて単純な私・・・・・・。
残りの2個(大きくなっている分)は、決して鳥に先取りされてはならぬ!
凜々子の悲劇は私の悲劇でもあり、新たな決意の朝でもあった・・・・・・。