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霧の朝
今日は午後からの仕事なので、ゆっくりと6時に目覚め、7時にベッドから抜け出した。
ラジオから流れる“濃霧注意報”の言葉どおり、神奈川東部のこの辺りも、森には霧が発生していた。

森と呼んでいるのは、フェンスを隔てた山の斜面部分。
越してきた当時は、木は一本も残らず伐採されていて、二階の窓からは浦賀水道が見下ろせた。
それが今や大きな木々に囲まれ、朝陽が東側のキッチンに射し込むまでに、かなりの時間を要する。
夏は涼しくていいけれど、その分冬は寒い。
それでも森林を思わせるこの空間からは、人間が生きていく上で絶対的に必要な地球上の生命体のようなものを感じている。
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生命体といえば、わが家のバスルームに体調2-3mmの小さなクモがいた。
最初見た時は、寒くて飛べなくなった蚊が止まっているのかと思ったほど、か細くて小さい。
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このクモは、私の気配を察すると必死に壁をよじ登ろうと動き出す。
ところが、タイル一枚分ほど登ると、真っ逆さまに落ちる。タイルにクモの糸が付きにくいのだろうか。
かわいそうに何度も何度も登っては落ちてくる。その内に浴槽に落ちて溺れ死ぬのではないか、と心配した。
それでも、野生の生き物にはヘタに手を貸してはいけないと思っているから、湯船に浸かりながらジッと見守っていたわけ。

今朝、お風呂の残り湯を洗濯機に入れながら、クモ吉は再びタイルを登り始めた。
(あたしゃ、取って食わないよ)
と心の中で言いつつ、彼(?)にとってはロッククライミングのようなのだろうか、などと考えたりした。
このまま壁を登りきらなかったら、食糧をどうやって調達するのだろう・・・・・・・。

そういう思いに至った時、努力して努力して生き抜こうとしている人間を神さまが見た時、きっと手を貸してあげたいと思うに違いない、などと思った。ベタベタと手助けはしないけど、ちょいと指先でお尻を持ち上げてあげるような・・・・・小さな出口を用意してくれることがあるかもしれない。

そう思って、私も小さなクモ吉を救ってもよいのではないか、に至った。
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生ソバが入っていたボール紙を、クモ吉のお尻の下に沿わせると、つるんと滑った拍子に乗っかった。
真っ白の紙の上をちょこちょこと動きまわり、あっという間に文字が書いてある裏に移動する。
(おや、アンタは字を読むのが好きなのかい?)・・・・・・そんな訳ない。

さあ、旅立ちの時!
私はクモ吉が紙から落っこちないように気をつけながら、洗面所の窓を開けて笹の葉の上に置いた。
・・・・・・と思っているのに、なかなか紙から離れない。
(クモ吉! 外の方が食べ物があるからね。 元気でガンバレっ!)
私は子を旅立たせる母のような気持ちで(?)、クモ吉の糸が葉にくっつくように、紙を何度かくるくると回した。

これは紙にへばり付いているクモ吉ではなくて、笹の葉から糸をツツーッと垂らしてぶら下がっているところ。
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万一、私が間違って地獄に行ってしまった時は、糸を垂らしておくれよ。・・・・・・
なんてお願いし終わると、シルクのように薄くなった霧の中に日が差し込んできた。
センダンの枝や葉には、昨夜の雨の滴がダイヤモンドのように輝いている。
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まるでクモ吉の旅立ちを祝っているように思えた。・・・・・・

苦あれば楽あり、いいことばかりは続かない、悪いことばかりも続かない。
そうやって生き抜いていくしかないんだなぁ。・・・・・




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by anrianan | 2012-11-07 09:15 | ■とりあえず日記
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